経済の発展段階に差があり文化・宗教も多様なアジアはEUとは違う。
しかし、その東アジアで民間主導で事実上の経済圏は出来上がっている。
貿易、投資の相互依存度はEUに匹敵する。
あとは「政治」が背中を押す番である。
その大前提は日中韓で戦後のけじめをつけることだ。
ポストKは、だれもがわだかまりなく行ける追悼施設になるまでは、A級戦犯を合記した靖国神社の参拝を見合わせるべきだ。
中国、韓国も反日の歴史教育で国民感情をいたずらに刺激してはならない。
北朝鮮問題の打開は日中韓の緊密な連携にかかっている。
米国の国際政治学者、J教授はW紙への寄稿で「次期首相は靖国参拝をやめ中韓首脳を東京に招け」と提案する。
日本はアジアの英国ではなく、和解と正常化を両立させたドイツを見習えと説く。
経済統合には地域を超えた普遍の理念がある。
覇権主義を排し平和をめざすことである。
それには政治の強い意志と深い知恵がいる。
「統合には時間がかかり、ナショナリズムは刻一刻、頭をもたげる」とJは警告している。
時代はいま何を求めているか。
次期首相の使命は負の遺産を克服し、経済統合を軸に未来志向でアジアの時代を築くことだろう。
世界を震憾させた北朝鮮の核実験発表に対して、国連安全保障理事会は法的強制力をもつ経済制裁決議を採択した。
主要国間の立場の違いを乗り越えたスピード採択は、核拡散の連鎖に国際社会がいかに深い危機感を共有しているかを示した。
安保理の調整は米中主導だったが、唯一の被爆国である日本が協調行動の先導役を担ったのは意味がある。
しかし日本がとるべき選択は直面する危機に対応することだけではない。
北朝鮮リスクのなかでこそ、改革を加速し成長力を高める経済戦略が求められる。
国連安保理でこれほど主要国が結束できたのは異例だろう。
核拡散への危機の連鎖は主要国の足並みの乱れから始まった。
産業革命発祥の地、英国バーミンガム。
一九九八年にここで開いたサミット(主要国首脳会議)は地球をおおう危機に立ち往生した。
サミットに照準を合わせたインドの核実験に首脳は断固とした協調姿勢をとれなかった。
討議はサッカーのテレビ観戦のため早めに打ち切られたほどだった。
取材していて、これほど「サミットの無力」を感じることはなかった。
バーミンガムの失敗を待っていたかのようにパキスタンが核実験に走る。
深刻なのはここからの危機の連鎖だ。
C博士が核技術を北朝鮮、イラン、リビアに売り渡したのである。
香港からフェリーで一時間、マカオの市街にその銀行はあった。
北朝鮮の不正資金取引の舞台になった「バンコ・デルタ・アジア」だ。
古くて小さな銀行は車で通りすぎてしまうほど目立たなかった。
この銀行の口座を凍結する米国の金融制裁が金正日体制を追い込んだのは確かだ。
北朝鮮の核実験発表は核拡散の連鎖の結果であるとともに、次の連鎖を招く危険をはらむ。
核技術が文民統制の通じない独裁国家やテロリストに渡れば、地球規模の危機につながる。
危機に直面する日本が単独制裁も含めて強い姿勢を打ち出したのは自然である。
では危機のなかで日本は何をめざすのか。
冷戦末期、核の危機に直面していた欧州に学ぶことは多い。
欧州を舞台に、米ソが核で角突き合わせた一九八○年代初頭。
反核運動は西欧全域に広がっていた。
漂っていたのはユーロ・ペシミズム(悲観主義)だった。
欧州通貨は米ドルに対して軒並西独が米核ミサイルの配備を決定するなかで、八三年十一月、欧州中距離核戦力(INF)交渉は決裂する。
ジュネーブで交渉を取材していて、寒さのなか背筋が凍る思いがした。
しかし、核危機のなかにあってもブリュッセルのECを中心に改革への地道な努力が続けられた。
冷戦の終結とともにそれは一気に花開く。
市場統合、単一通貨ユーロの創設、そして東方拡大と続く。
EUの挑戦は、たそがれていた成み安値をつけた。
熟国家群をよみがえらせ成長力をかさ上げした。
日本はいま改革の原点に立ち返るしかない。
北朝鮮の核実験発表にも市場は動揺しなかった。
「いざなぎ景気」越えで日本経済の復活に手応えがあるからだろう。
しかし、持続力を高められるかどうかは改革しだいである。
危機のなかで改革が二の次にされるようだと、外資流出など市場に動揺が広がる恐れはある。
重要なのは、経済財政諮問会議の積極活用だ。
A首相は新内閣初の諮問会議で「改革の、成長のメーンエンジンになってもらいたい」とO日本経団連会長ら四人の民間議員に呼びかけた。
民間議員はイノベーションによる生産性向上など七項目の成長戦略目標を掲げた。
気になるのはK首相の時代に比べてA政権は改革の気構えが欠けているようにみえる点だ。
デフレ下のK時代は改革に難しさがあったが、デフレ脱却がみえたA政権下では改革は本番を迎えて当然だ。
「改革のハードルを高くする」のは経済環境にも沿う。
成長戦略はもはや総論を語り合うのではなく各論を詰める段階である。
カギを握るのは、税制改革と東アジア経済統合だ。
K改革が小ぶりの改革に終わったのは、肝心の税制改革に取り組まなかったからである。
消費税率の引き上げはいずれ避けられないが、国際競争力を維持し、海外から直接投資を呼び込むには、企業減税を先行させるしかない。
海外に比べて高い法人税率は引き下げる必要がある。
アジア通貨危機から十年がたつ。
タイ・バーツの急落に始まる危機はインドネシア、マレーシア、韓国などに瞬く間に伝染し、日本の金融危機とも連鎖した。
急激で巨大な国際資本移動を前に、勃興しかけていたアジアのひ弱さが露呈された。
しかし歴史は皮肉だ。
危機はアジアを鍛え直した。
アジアはいま中国、インドの台頭と相まってグローバル経済の主役になっている。
北朝鮮リスクのもとで一段と重みを増すのは、東アジア経済共同体構想である。
東アジアでは民間企業主導で相互依存が深まり、事実上の東アジア経済圏が形成されている。
A首相が中韓首脳との会談を再開したことで日中韓には新時代が到来しようとしている。
日中韓首脳がそろって後押しすれば、東アジア経済共同体に格上げできるはずだ。
それは地域の成長力を大きく底上北朝鮮の核実験発表は世界システムを根底から揺さぶった。
思い知らされたのは危機への対応とともに、力強い経済基盤の大切さである。
改革と成長こそ安全保障の土台である。
東アジア地域の安定にとって、それは必須の条件である。
核危機の時代にあって、それは唯一の被爆国である日本の国際責任でもある。
げするだろう。
通貨危機を克服したアジアだが、こんどは環境危機という重い現実に直面する。
アジアは温暖化ガスの世界最大の排出地域になっている。
ことしは温暖化防止のための京都議定書策定から十年でもある。
ポスト京都議定書をめぐる国際政治が動いている。
そんななかで始動するアジア統合には、地域主義を超えた地球的視野が求められる。
今月初めの「京都会議」で固まったのは、通貨危機を防ぐ枠組みである。
ASEANと日中韓の財務相会合は通貨危機に備え多国間で外貨準備を融通する制度を設けることで合意した。
チェンマイ・イニシアチブのマルチ化と呼ばれるこの金融協力についてO財務相はこう語る。
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